競艇でいうチルトの意味とは
出走表やモニターに記載されていたり、周回展示のあとの場内アナウンスで流れたりする「チルト」。
コアなファンにとっては馴染み深いワードですが、初心者にとってはどういう意味で、何をチェックするうえで必要なものなのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこでまずは、競艇でいうチルトの意味や特性など基礎知識をご紹介しましょう。
最大8段階
競艇でいうチルトとは、動力となるモーターを艇(ボート)に取り付ける際の角度のことです。
「チルトアジャスター」という、五角形の特別な部品でチルトの角度を調整します。
このチルト角度は-0.5度から始まり、0度、0.5度、1度、1.5度、2度、2.5度、3度と0.5度刻みの計8段階あり。
チルトの調整は、その艇に乗るボートレーサー自身が行います。
競艇場によって幅が違う
先程チルトは-0.5~3度の8段階で調整するとお伝えしましたが、実はこのチルト、競艇場によって調整できる範囲幅が異なるんです。
以下、BOAT RACE オフィシャルウェブサイトに記載されている情報を表にまとめたのでチェックしてみましょう。
チルト角度の調整範囲幅 | 競艇場 |
-0.5~0.5(3段階) | 戸田 |
-0.5~1.0(4段階) | 桐生 |
-0.5~1.5(5段階) | びわこ、住之江、若松、福岡、大村 |
-0.5~2.0(6段階) | 江戸川、徳山 |
-0.5、0、0.5、1.0、1.5、2.0、3.0(2.5度なし、7段階) | 平和島、多摩川、蒲郡、常滑、津、三国、尼崎、鳴門、丸亀、児島、宮島、下関、芦屋、唐津 |
-0.5~3.0(8段階) | 浜名湖 |
表を見てわかる通り、最大8段階で調整できるのは浜名湖競艇場だけになっています。
反対に、戸田競艇場は-0.5~0.5の3段階しか調整できません。
ここで「なぜ競艇場によって調整できるチルトの幅が違うの?」という疑問が出てくる方もいますよね。
競艇場によって調整できるチルトの幅が違う理由、それは競艇場によって水面事情が違ったりフィールドの広さが違ったりするからです。
ターンに影響あり
例えば、-0.5~0.5の3段階しか調整できない戸田競艇場は、全国で1番コース幅が狭いという特徴があります。
このコース幅が狭いという特徴がある競艇場は、一方でターンしにくいという特性も。
後で詳しく説明しますが、チルト角度はプラスに調整するほど艇が不安定になるため、転覆する危険性や対岸に突っ込んでしまう恐れが高くなってしまいます。
そのため、コース幅が狭い競艇場やターンしにくい競艇場では、レースの安全性を考慮してチルト角度の調整幅が狭くなっているのです。
角度でモーターはどれだけ変わるのか
艇を前進させる原動力のプロペラは、モーターの先にあります。
チルト角度の調整は、同時にこのプロペラの角度も決まるということを覚えておいてください。
そう、チルト角度の調整は「たかが0.5、されど0.5!」。
この僅かなチルト角度の差が、レースの勝敗を分けることもあります。
ここでは、チルト角度でモーターがどれだけ変わるのかを解説しましょう。
チルトを下げた場合
チルトを下げた場合は、プロペラが艇に対してやや下につく状態になります。
そうすると艇の先も下を向く形になり、水面への接水面積が大きくなって艇は安定します。
艇が安定しているということは、流されにくく出足が強くなるということ。
チルトの取り付け角度は、小さければ小さいほど転覆したり傾いたりしにくくなるので、ターンが回りやすくなるのです。
しかしながら、チルトを下げるのもメリットばかりではありません。
接水面積が大きいがゆえに、直線でスピードが伸びにくくなるというデメリットもあります。
チルト角度を下げた場合のおさらい
【メリット】
・艇が安定する
・流されにくく出足が強くなる
【デメリット】
・直線でスピードが出にくい
チルトを上げた場合
逆にチルトを上げた場合は、プロペラが艇に対してやや上につく状態になります。
そうすると艇の先も上を向く形になり、水面への接水面積も小さくなる結果に。
艇は水面からの抵抗を受けにくくなることから、直線での伸びが良くなるのです。
「ターンに影響あり」のところで触れましたが、チルトを大きく上げてしまうとスピードが出る反面、艇が不安定になりターンが難しくなるといったデメリットを伴います。
出足が強く安定するのをとるか、はたまた直線でのスピード感をとるのか。
チルトの調整はボートレーサー自身の能力や感覚にもよってくるので、ここは腕の見せ所にもなるのではないでしょうか。
チルト角度を上げた場合のおさらい
【メリット】
・直線でスピードが出やすくなる
【デメリット】
・艇が不安定になりターンが難しくなる
チルトの角度の基準とは
チルトの角度は上げるにしろ下げるにしろ、それぞれにメリット・デメリットがあるのがお分かりいただけたのではないでしょうか。
このチルトの角度、現在ボートレーサーたちの間では基準となる数値があるようです。
その基準的な数値とは?
ここではチルト角度の基準と、チルト角度3.0の艇の注意点を深堀していきます。
-0.5が主流
参考までに、2021年4月13日に津競艇場で行われたG1「開設69周年記念 ツッキー王座決定戦」12レースの出走表を見てみましょう。
チルトは直前情報からチェックできるのですが、どのA1選手も-0.5に調整しているのが分かります。
そう、現在ボートレース界ではチルト-0.5が主流!
どの競艇場のレースでも、ボートレーサーは-0.5に調整していることが多いんです。
では、なぜ-0.5が主流なのか。
-0.5に調整する理由は、ボートレーサーの戦略とスキルにあります。
実は今、主力選手の多くが出足の強さを重視しており、スタートやターンで勝負をかけることが多い状況です。
ターンマーク付近でスピードを落とすことなく全速ターンをキメるには、艇の安定が重要なポイントになります。
このテクニックをするために適しているのが、チルト-0.5というわけなんです。
チルト3.0の艇に注意?
2021年3月28日に福岡競艇場で行われたSG「第56回ボートレースクラシック」の優勝戦では、石野貴之選手がチルト0に調整し、見事優勝しました。
このようにチルト0、チルト0.5に調整するボートレーサーもたまに見かけますが、チルト3.0に調整する選手はほとんどいません。
なぜなら、チルトは上げれば上げるほど艇が不安定になりターンが難しくなるから。
ハイリスクにも関わらずチルト3.0にする選手がいるとすれば、その選手は間違いなく「勝負師」か「変わり者」ですよね。
しかし、現在のボートレース界には「チルト3.0といえばこの選手!」と言われるボートレーサーがいます。
それが阿波勝哉選手なのです。
チルト3.0といえば阿波勝哉選手
阿波選手は、B1階級の主力級選手。
チルト3.0調整でスピード加速するそのレーススタイルに、多くのファンが度肝を抜かれました。
また、1号艇であってもあえて大外6コースからスタートするというこだわりもすごいところ。
そのため、阿波選手は「アウト屋」とも呼ばれています。
しかし、数年前にプロペラの規定変更があってからは、阿波選手も3.0に調整しづらくなりました。
それでも攻めのスタイルは健在!
周りが-0.5に調整するところを阿波選手は1.5にするというスタイルで攻めているようです。
今後も阿波選手には目が離せませんね。
チルトを舟券予想の参考に
チルト調整もボートレースにおける戦略のひとつ。
どう調整するかでレースの勝敗が分かれるといっても過言ではありません。
そのため、舟券予想をするときはボートレーサーがチルトをどの角度に調整しているのかも重要なポイント!
今までチルトは参考にしていなかったという方は、次回以降かならずチェックしてみてくださいね。